IDKオリジナル連載 分かる!ネットワークカメラ基礎講座
ネットワークカメラでは下記のような様々な環境や条件下において、所期の性能を最大限に発揮し、防犯や見守りなどの目的をきちんと果たすことが求められます。
•設置性を確保する為のコンパクト筐体の実現、防水防じん対応筐体の実現
•光の状態が変化する場所や昼夜を通した撮影
•設置台数を最小限にするための広角(広視野)撮影
また、ネットワークカメラでは、設置後の頻繁なメンテナンスや調整・故障なども避ける必要が有ります。それらを実現するために、ネットワークカメラには最新の光学技術が投入されており、ネットワークカメラを選定する際に光学仕様・光学性能は重要なポイントとなります。
レンズのピントを被写体に合わせた状態での、レンズからイメージセンサーまでの距離です。焦点距離は一般的にmm単位で表されます。
ズームレンズの場合は、XX-YY mmというように焦点距離の両端の数字で表します。
撮影される範囲を角度(水平・垂直)で表しています。
ネットワークカメラの場合には、180度を超えて360度(全方位)を撮影できるモデルも多数あります。
F値は、レンズの焦点距離を有効口径で割った値で表され、レンズの集光能力、すなわち明るさを示す指標として用いられます。
レンズの有効口径が大きくなる、または焦点距離が短くなるほどF値が小さくなり、明るいレンズになります。
一般的には、単焦点のカメラでは、レンズが1枚のシンプルな構成になるので、F値が小さくなる(=明るい)傾向があります。
また、ズームレンズでは複数枚のレンズが組み合わされるので、光の透過率が減少してレンズのF値が大きくなる(=暗い)傾向があります。
ネットワークカメラの最低被写体照度*(暗所撮影性能)は基本的には、
1.レンズのF値
2.イメージセンサーの感度
3.映像エンジンの性能
上記3要素の掛け合わせで決まります。
(LEDなどの赤外線照明を内蔵したカメラでは、暗所撮影性能がさらに向上します)
収差には「光の波長分散」がもたらす「色収差」と、球面レンズのようにレンズ形状に起因する「形状の収差(ザイデル収差)」があります。
「色収差」は光の色(波長)ごとに屈折率が異なることで生じるため、色のにじみ(軸上色収差)や色ずれ(倍率色収差)として現れます。また、「形状の収差」はひとつの色(波長)ごとに様々な種類の収差として発生し、ボケや滲み、歪などの画質悪化要因になります。
ネットワークカメラの撮影画質においては「歪曲収差」性能が重要です。「歪曲収差」性能が良くないレンズでは、本来は水平・垂直である被写体の周辺部が、膨らんだ樽型や(樽型ひずみ)、凹んだ糸巻き型(糸巻き歪)になって撮影され、映像の正確な確認を妨げてしまいます。
歪曲収差の例(引用元:Canonホームページより)
これらの収差を克服しクリアな映像を撮影するために、ネットワークカメラではレンズに下記の最新技術を取り込んでいます。
レンズの中心部と周辺部で曲率や形状を変えることで、それぞれの光の屈折率をコントロールし収差を補正する技術です。
球面レンズ、非球面レンズの比較(引用元:Canonホームページより)
レンズ表面に特殊な薄膜をコーティングし特定の色(波長)の取り込みをコントロールします。
レンズの内部反射や、紫外線や赤外線など不要な外部光を削減することで、光透過率の改善を図り、ゴーストやフレア除去を実現し、被写体をクリアに撮影するための技術です。
ゴースト・フレア現象の例(イメージ)
ネットワークカメラのモデルの中にはレンズ交換が可能なモデルがあり、撮影用途や環境に合わせて、最適なレンズとカメラを組み合わせることが出来ます。
レンズを選ぶ場合、ネットワークカメラで使用されているレンズマウント(レンズとカメラの接合部の規格)の種類を確認し、レンズとカメラ本体のマウント規格を合わせる必要があります。主なマウント規格としては今ではCSマウントが主流で、他にはCマウントもあります。
CS、Cマウントは、どちらも1インチのネジピッチで外観はよく似ていますが、カメラに取り付けたときのレンズとイメージセンサー間の距離が異なります。CSマウントの場合、センサーとレンズの距離は12.5 mm、Cマウントの場合、17.526 mmになります。
ネットワークカメラでは、光の状態の変化で暗くなった時などの暗所撮影時(低照度撮影時)には、カラー撮影から白黒撮影に自動的に切り替えることで映像を撮影し続けます。
ネットワークカメラではレンズとイメージセンサーの間に、自動でオン・オフ可能な赤外線カットフィルターを搭載しています。
赤外線カットフィルターは、人間の目が実際に見る色と同じ色でカメラが撮影するよう、明るい環境下では赤外線を除去しています。
一方、低照度環境下や夜間ではこの赤外線カットフィルターが自動的にオフになり、可視光線の量が十分でなくても、人間の目では見えない近赤外線の光を検知して、仕様上の最低被写体照度まで白黒映像を撮影します。
LED赤外線内臓カメラの例2
Canon製 VB-H761LVE(ズームに合わせたLEDを搭載)
※イラストはイメージです
「ネットワークカメラ」とそのシステムや周辺機器等の技術、各機器の種類や取り扱いについて、分かりやすく解説する石渡電気オリジナルコラムです。
このコラムの連載では、ネットワークカメラの基本構造から画質技術、種類、レコーダーの基本構造や種類、システム構築や導入事例などを分かりやすく解説・紹介することで、ネットワークカメラシステム全体の基本知識が身に付けられるコンテンツです。
(記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります)