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IDKオリジナル連載 分かる!ネットワークカメラ基礎講座

[第3回]ネットワークカメラの光学技術

「ネットワークカメラ」とそのシステムや周辺機器等の技術、各機器の種類や取り扱いについて、分かりやすく解説する石渡電気オリジナルコラムです。
このコラムの連載では、ネットワークカメラの基本構造から画質技術、種類、レコーダーの基本構造や種類、システム構築や導入事例などを分かりやすく解説・紹介することで、ネットワークカメラシステム全体の基本知識が身に付けられるコンテンツです。
(記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります)

ネットワークカメラの光学技術

 ネットワークカメラでは下記のような様々な環境や条件下において、所期の性能を最大限に発揮し、防犯や見守りなどの目的をきちんと果たすことが求められます。
 •設置性を確保する為のコンパクト筐体の実現、防水防じん対応筐体の実現
 •光の状態が変化する場所や昼夜を通した撮影
 •設置台数を最小限にするための広角(広視野)撮影
また、ネットワークカメラでは、設置後の頻繁なメンテナンスや調整・故障なども避ける必要が有ります。それらを実現するために、ネットワークカメラには最新の光学技術が投入されており、ネットワークカメラを選定する際に光学仕様・光学性能は重要なポイントとなります。

ネットワークカメラの光学仕様

カタログなどで記述されている光学仕様には主に下記のものがあります。

焦点距離

レンズのピントを被写体に合わせた状態での、レンズからイメージセンサーまでの距離です。焦点距離は一般的にmm単位で表されます。
ズームレンズの場合は、XX-YY mmというように焦点距離の両端の数字で表します。
 
・焦点距離の短いレンズほど画角が広くなり、撮影される範囲が広がります。 
・焦点距離の長いレンズほど画角が狭くなり、被写体が大きく撮影されます。

画角

撮影される範囲を角度(水平・垂直)で表しています。
ネットワークカメラの場合には、180度を超えて360度(全方位)を撮影できるモデルも多数あります。
ネットワークカメラの光学仕
 

F値

F値

F値は、レンズの焦点距離を有効口径で割った値で表され、レンズの集光能力、すなわち明るさを示す指標として用いられます。
レンズの有効口径が大きくなる、または焦点距離が短くなるほどF値が小さくなり、明るいレンズになります。
 

一般的には、単焦点のカメラでは、レンズが1枚のシンプルな構成になるので、F値が小さくなる(=明るい)傾向があります。

また、ズームレンズでは複数枚のレンズが組み合わされるので、光の透過率が減少してレンズのF値が大きくなる(=暗い)傾向があります。

 

ネットワークカメラの最低被写体照度*(暗所撮影性能)は基本的には、

1.レンズのF値
2.イメージセンサーの感度
3.映像エンジンの性能


上記3要素の掛け合わせで決まります。
(LEDなどの赤外線照明を内蔵したカメラでは、暗所撮影性能がさらに向上します)
 
明るいレンズのメリットは、暗所撮影時にイメージセンサーや映像エンジンなどの電気系で発生するノイズを抑えることが可能で、よりクリアな映像の撮影が出来ることです。 

 

照度の単位 ルクス(lx)について

最低被写体照度の性能は、ルクス(lx)表示により感度として記述されますが、これは上述のように『レンズ』・『イメージセンサー』・『映像エンジン』を掛け合わせた総合的な性能として、各メーカー独自に算出されます。
 
レンズのF値は業界標準の測定基準による仕様表示ですが、一方、イメージセンサーや映像エンジンの感度の性能評価には業界測定基準がありません。
つまり、最低被写体照度の測定値(ルクス,lx)については業界測定基準が存在しないため、カタログ仕様値によるメーカー間での最低被写体照度性能の比較は不正確である点に注意してください。
シビアな撮影環境下でのネットワークカメラの選定においては、最低被写体照度に関して、カタログ上の仕様数値での比較だけでなく、実際の環境下での画質デモなどを通して、実際の性能と画質を確認することをオススメします。
ルクス(lx):簡略的に説明すると、1平方メートルの面が1ルーメン(≒ろうそく1本の明かり)の光で照らされた時の明るさの単位です。

照度の例

  ・強い日差し   100,000 lx     ・1m離れたろうそくの光 1 lx
  ・オフィス内 500~700 lx     ・満月の夜         0.3 lx
  ・薄暗い部屋      100 lx     ・三日月の月明かり     0.01 lx
  ・屋外駐車場*     5~20 lx     ・星明り          0.001 lx

被写体照度

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ネットワークカメラ  レンズの最新技術(収差を克服しクリアな映像を撮影するために)

レンズ性能のひとつとして”収差“があります。これはカタログ上では仕様に記述されない性能になりますが、ネットワークカメラの撮影画質を左右する重要な要素のひとつです。

収差の原因

光は物質を透過するとき、色(波長)ごとの屈折率が異なるという性質をもっています。この色(波長)ごとの屈折率の違いを分散といいます。例えば、プリズムを通過した光が虹色のスペクトルに分離されるのはそのためで、カメラのレンズでも同じ現象が生じます。
被写体照度
(プリズムを通過すると光と色ごとの波長・屈折率の違い)
 
また、一枚の球面レンズでは同じ色(波長)の光でも光の入射位置により屈折する角度が異なり、光の収束する位置(光が集まる中心点)のずれが発生します。
ひとつの色(波長)でも複数の色(波長)でも、理想はすべての光が一点に集まることですが、実際の光学設計上は、やむを得ず理想の条件との差が生じます。
この差を「収差」と呼びます。
収差はレンズの性能を測るひとつの目安となっています。
被写体照度収差の例(引用元:Canonホームページより)

収差の種類(もっと詳しく)

収差には「光の波長分散」がもたらす「色収差」と、球面レンズのようにレンズ形状に起因する「形状の収差(ザイデル収差)」があります。

「色収差」は光の色(波長)ごとに屈折率が異なることで生じるため、色のにじみ(軸上色収差)や色ずれ(倍率色収差)として現れます。また、「形状の収差」はひとつの色(波長)ごとに様々な種類の収差として発生し、ボケや滲み、歪などの画質悪化要因になります。

ネットワークカメラの撮影画質においては「歪曲収差」性能が重要です。「歪曲収差」性能が良くないレンズでは、本来は水平・垂直である被写体の周辺部が、膨らんだ樽型や(樽型ひずみ)、凹んだ糸巻き型(糸巻き歪)になって撮影され、映像の正確な確認を妨げてしまいます。

被写体照度
歪曲収差の例(引用元:Canonホームページより)

これらの収差を克服しクリアな映像を撮影するために、ネットワークカメラではレンズに下記の最新技術を取り込んでいます。

最新技術1 非球面レンズ

レンズの中心部と周辺部で曲率や形状を変えることで、それぞれの光の屈折率をコントロールし収差を補正する技術です。

被写体照度
球面レンズ、非球面レンズの比較(引用元:Canonホームページより)
 

最新技術2 レンズコーティング

レンズ表面に特殊な薄膜をコーティングし特定の色(波長)の取り込みをコントロールします。
レンズの内部反射や、紫外線や赤外線など不要な外部光を削減することで、光透過率の改善を図り、ゴーストやフレア除去を実現し、被写体をクリアに撮影するための技術です。

coating_test

 

「ゴースト」はレンズ部分などで複雑に反射を繰り返した光が漏れて、正しい映像とずれた別の映像が写ったものです。
「フレア」はきわめて明るい光源方向にレンズを向けた際に、レンズ部分やカメラ内で光が反射することで、映像の一部や全体が白っぽくなり、映像の鮮明さを損なう現象です。

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ゴースト・フレア現象の例(イメージ)

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レンズマウント規格 レンズ交換が可能なカメラの例 AXIS Q1659(※EF85mm F1.2L II USM装着時)

q1659-02

ネットワークカメラのモデルの中にはレンズ交換が可能なモデルがあり、撮影用途や環境に合わせて、最適なレンズとカメラを組み合わせることが出来ます。

レンズを選ぶ場合、ネットワークカメラで使用されているレンズマウント(レンズとカメラの接合部の規格)の種類を確認し、レンズとカメラ本体のマウント規格を合わせる必要があります。主なマウント規格としては今ではCSマウントが主流で、他にはCマウントもあります。

CS、Cマウントは、どちらも1インチのネジピッチで外観はよく似ていますが、カメラに取り付けたときのレンズとイメージセンサー間の距離が異なります。CSマウントの場合、センサーとレンズの距離は12.5 mm、Cマウントの場合、17.526 mmになります。

日中・夜間の自動撮影モード(デイモード・ナイトモード)LED赤外線内蔵カメラの例1 池上通信機製 IPD-BL300

IPD-BL300

ネットワークカメラでは、光の状態の変化で暗くなった時などの暗所撮影時(低照度撮影時)には、カラー撮影から白黒撮影に自動的に切り替えることで映像を撮影し続けます。

ネットワークカメラではレンズとイメージセンサーの間に、自動でオン・オフ可能な赤外線カットフィルターを搭載しています。

赤外線カットフィルターは、人間の目が実際に見る色と同じ色でカメラが撮影するよう、明るい環境下では赤外線を除去しています。

一方、低照度環境下や夜間ではこの赤外線カットフィルターが自動的にオフになり、可視光線の量が十分でなくても、人間の目では見えない近赤外線の光を検知して、仕様上の最低被写体照度まで白黒映像を撮影します。
 

0 lx(ゼロルクス)の完全暗所になるような場所では、LED(赤外線発光)を内蔵したネットワークカメラ、もしくはネットワークカメラと外部LED発光器との連動システムを組むことで撮影が可能になります。
この場合、LEDの発光範囲がネットワークカメラの撮影範囲以上であることが重要です。
 

IPD-BL300

LED赤外線内臓カメラの例2
Canon製 VB-H761LVE(ズームに合わせたLEDを搭載)
※イラストはイメージです

参考情報:明るさの単位・早分かり

akarusa

 


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