IDKオリジナル連載 SCS評価制度 連載記事|第18回
サプライチェーン・セキュリティ対策評価制度(SCS評価制度)
★3取得支援を「無償」で受けられる実証が始動──お助け隊サービス(新類型)実証事業、15事業者を公表し参加中小企業の募集を開始
[2026.10.30]
1.何が始まったのか──「★3取得の伴走支援」を国の実証として無償提供
お助け隊サービス(新類型)は、中小企業がSCS評価制度の★3・★4を効率よく取得できるよう、①課題の可視化(診断・助言)、②推奨ITツールの導入、③ITツール以外の支援(コンサルティング・教育等)をワンパッケージで提供する伴走支援サービスです。2021年度から運用されている既存のお助け隊サービスは累計約10,900社(2026年3月末時点)に導入されていますが、★3の要求事項にはポリシー策定などの組織的対策が多く含まれるため、既存サービスの導入だけでは一部しか達成できない──そこで★取得まで伴走する「新類型」が構想されました。
今回の実証は、その新類型を正式な制度にするための検証プロセスです。採択された15事業者のサービスに中小企業が実際に参加し、導入しやすいサービス体系と適切な価格要件を検証したうえで、サービス基準を作成し、2027年度末までの制度化を目指すとされています。
| 項目 | 内容 |
| 公表日 | 2026年9月15日(実証事業者15者と参加案内を公開) |
| 実証期間 | 2026年10月~2027年9月(最大1年程度) |
| 費用 | 実証への参加は無償。 「実証事業者から実証参加に関する費用を請求することはありません」と明記。 実証期間終了後のサービス継続は有償(事業者から別途案内) |
| 申込方法 | IPAではなく、15事業者から自社に合うサービスを選び、実証事業者へ直接連絡。 複数事業者への重複参加は不可 |
| 留意点 | 要件が合わない場合や事業者の実証予定数に達している場合は参加できないことがある |
2.国が本気である理由──SCS評価制度は「国策」として動いている
この実証を単なるキャンペーンと見ると本質を見誤ります。SCS評価制度は、経済産業省と内閣官房国家サイバー統括室が制度所管省庁となり、IPAが制度運営機関を務める国の制度で、2026年度末頃の運用開始に向けて、8月の制度規程公開、9月の評価機関等の公募開始と、着々と駒が進んでいます(第14回・第15回参照)。
そして今回の実証は、第11回で解説したとおり「1件あたり1億円(税込)を上限に複数者を採択」する企画競争として公募されたものです。結果として15者が採択された──つまり国は、中小企業の★3取得支援に億単位の予算を投じ、その支援を実証期間中は中小企業の負担ゼロで提供する形をとりました。「制度を作って終わり」ではなく「取得の入口まで国が用意する」段階に入ったこと、これが今回の公表の最大の意味です。
採択15者の顔ぶれも注目に値します。NTTデータ、NTTドコモビジネス、リコージャパン、富士フイルムビジネスイノベーションジャパンといった全国区の大手、GMOサイバーセキュリティ byイエラエ、三井物産セキュアディレクションなどの専門セキュリティ企業に加え、大阪商工会議所、ちばぎんコンピューターサービス(千葉銀行グループ)、セキュアイノベーション(沖縄)、イシマル(長崎)など地域密着型のプレーヤー、さらに自動車業界特化のSOMPOリスクマネジメントまで含まれます。大手からの号令が強まる自動車サプライチェーンに専用モデルが用意されたことは、「★の要求は来る」という前提で各業界が動いている証左といえます。
3.無償で受けられる支援の中身──診断から★取得申請まで3ステップ
| ステップ | 内容 |
| STEP1 課題の可視化 | SCS評価制度の要件項目ごとに自社の対策状況を診断し、未達成項目の対策を「改善計画書」として取りまとめる |
| STEP2 対策の実施 | 診断結果に基づき★3・★4取得に必要な対策を伴走支援。推奨ITツールの導入と、セキュリティポリシー・インシデント手順書の整備、セキュリティ教育など「自助努力では達成しづらい」組織的対策の支援 |
| STEP3 ★取得申請支援 | 要求事項の充足を確認し、セキュリティ専門家による確認・評価、申請書作成を支援 |
第16回で見たとおり、★3の評価基準はランサムウェア被害企業が「あれば良かった」と語った備えとほぼ一対一で対応します。その整備を、通常なら相応のコンサルティング費用がかかる伴走支援込みで、実証期間中は無償で進められる──中小企業にとって、これ以上条件の良い入口は当面出てこないと考えてよいでしょう。
ただし「無償」の中身は正確に理解しておく必要があります。参加企業には、制度創設に向けた意見の提出、導入アンケートへの協力、不審な通信を検知した際の関連情報の提供、実証終了後の有償でのサービス継続の検討、といった協力事項があります。国が価格・品質基準を作るためのデータ提供に協力する、というのが実質的な「参加費」であり、実証期間が終われば有償のサービスに切り替わる前提の仕組みです。
4.参加できるのはどんな会社か
対象は中小企業基本法等に沿った「中小企業等」で、業種ごとに資本金または従業員数のいずれかを満たせば対象です。主な業種の要件は以下のとおりです(会社および個人事業主)。
| 業種 | 資本金/出資総額 | 常時使用する従業員数 |
| 製造業・建設業・運輸業・その他 | 3億円以下 | 300人以下 |
| 卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
| サービス業 | 5千万円以下 | 100人以下 |
| 小売業 | 5千万円以下 | 50人以下 |
| ソフトウェア業・情報処理サービス業 | 3億円以下 | 300人以下 |
| 旅館業 | 5千万円以下 | 200人以下 |
このほか医療法人・社会福祉法人・学校法人(従業員300人以下)、商工会・商工会議所、組合、財団・社団法人、NPO法人なども対象に含まれます。大企業の子会社などいわゆる「みなし大企業」も、資本金・従業員の基準を満たせば対象になる点は押さえておきたいところです(法人格のない任意団体は対象外)。
5.実証事業者15者の顔ぶれ──誰が、どこで、何をしにくるのか
販売店にとってこの一覧は「お客様に勧めるためのカタログ」ではなく、「今後1年、自社の商圏で誰が動くのか」を知るための情報です。公表情報からエリア・業種・対応する★を一覧にしました(記載は実証実施の目安です)。
| 事業者 | 対象エリア | 主な対象業種 | 対応する★ |
| 株式会社NTTデータ | 全国 | 製造業中心に幅広く | ★3中心(一部★4) |
| 大阪商工会議所 | 全国 | 製造・物流・卸売・医療機関など | ★3のみ |
| 三井物産セキュアディレクション | 九州北部・東北・関東の7都県中心 | 製造業中心 | ★3中心(一部★4) |
| 株式会社アクシス | 全国(リモート基本) | 製造・建設・運輸・卸売・サービスなど | ★3中心(一部★4) |
| 富士フイルムビジネスイノベーションジャパン | 全国33支社所在地 | 製造・卸小売・出版印刷・サービス中心 | ★3中心(一部★4) |
| NTTドコモビジネス | 全国 | 製造・卸売小売・建設・サービスなど | ★3のみ |
| 株式会社オプティム | 全国(遠隔基本) | 製造・建設・卸売小売・サービス・運輸・医療福祉・宿泊飲食など | ★3・★4両対応 |
| 株式会社NTT Risk Manager | 全国(オンライン+現地訪問) | 製造・情報サービス・卸売物流を重点 | ★3・★4両対応 |
| 株式会社セキュアイノベーション | 沖縄中心、東京・名古屋・大阪・福岡ほか全国(オンライン) | 製造業優先、地域インフラなど | ★3のみ |
| ちばぎんコンピューターサービス | 千葉県 | 製造業重点、卸売小売・建設・サービスも | ★3中心(一部★4) |
| 株式会社イシマル | 長崎中心に九州北部圏 | 製造・卸売中心 | ★3中心(一部★4) |
| GMOサイバーセキュリティ byイエラエ | 首都圏基盤に全国(遠隔基本) | 製造中心、建設・運輸・卸売小売など | ★3中心(一部★4) |
| SOMPOリスクマネジメント | 全国(リモート主体) | 自動車業界 | ★3のみ |
| リコージャパン | 全国 | 製造・建設・運輸を重点に幅広く | ★3のみ |
| 株式会社フォーバル | 関西地域 | 製造中心、サプライチェーン関連業種 | ★3中心(一部★4) |
各事業者の連絡先(メールアドレス)と紹介サイトはIPAのページに掲載されています。全国区の大手は遠隔中心、地域プレーヤーは対面込み、SOMPOは自動車業界特化──それぞれの動き方を把握しておくと、自社の商圏・顧客層のどこと重なるのかが見えてきます。
6.販売店として、どう向き合うか──競合を正しく恐れ、正しく恐れすぎない
率直に言えば、この実証は販売店にとって競合です。自社がこれから有償で提案しようとしていた★3支援を、国の予算を背景に「無償」で提供するプレーヤーが15者、同じ市場に入ってきます。ですから、こちらから「無償の実証が始まりました」とお客様に案内して回る必要はありません。それは競合の集客を手伝うことになります。
一方で、過度に恐れる必要もありません。無償なのは実証期間中(最大1年程度)だけで、その後の継続は有償です。★3は毎年更新であり、取得して終わりではなく、運用・記録・年次点検・機器の保守が続きます。各事業者には実証予定数があり、エリアや業種の目安から外れるお客様、枠に入れなかったお客様は必ず残ります。そして15事業者が1年かけて全国で「★3とは何か」を説いて回ることで、これまで販売店が一社ずつ担ってきた啓発を国の予算が肩代わりし、市場そのものは確実に広がります。問題は、その広がった市場で選ばれる側にいられるかどうかです。
そのうえで、今月から動き出したいアクションを4つに整理します。
①自社の★3支援メニューを、実証より先にお客様へ届ける
最も重要なのは順番です。お客様が実証事業者の営業や商工会議所・金融機関経由の案内で「無償の★3支援」を先に知れば、有償の自社提案は後出しになります。逆に、日頃から付き合いのある販売店が先に「★3対応を一緒に進めましょう」と具体的な道筋(現状診断→規程・記録の整備→専門家確認→申請)を示していれば、お客様にとっての基準は自社になります。10月公開予定の「★3・★4 自己評価等ガイド」に合わせて支援メニューを固め、サプライチェーン系の重要顧客から順に、実証の話を持ち出すまでもなく自社提案を先に届けてください。
②「実証のこと、知ってる?」と聞かれたときの答えを用意しておく
こちらから案内しなくても、実証の情報は遅かれ早かれお客様の耳に入ります。そのとき「知らない」では信頼を失い、「無償には裏がある」式の否定に走れば、かえって不信を招きます。答えるべきは事実です。無償なのは実証期間中のみで終了後は有償になること、参加にはアンケートや検知情報の提供など協力事項があること、各事業者に予定数があり必ず参加できるわけではないこと、そして★3は取得後も毎年の更新と日々の運用が続くこと。事実を淡々と示したうえで、「実証を使う・使わないにかかわらず、取得後の運用まで含めて相談に乗れるのは私たちです」と言える準備をしておくことが、最良の防御になります。
③実証への参加を選んだお客様との関係は、これまでどおり大切に
お客様が検討の結果、実証への参加を選ぶこともあるはずです。それはお客様にとって合理的な判断であり、引き留めたり水を差したりすべきではありません。実証事業者が担うのは★3取得の支援であって、機器の保守、ネットワーク、日々のITの困りごとといった既存のお付き合いがなくなるわけではありません。実証期間中も定期的な接点を絶やさず、むしろ「★3を取った後」の話──毎年の更新、点検と記録の継続、検知の強化──を一緒に考える相手であり続けることが、実証終了後(2027年秋以降)に運用パートナーとして選ばれる布石になります。
④実証の手が届かないお客様への支援を優先する
業種・エリアの目安から外れるお客様や、募集枠に入れないお客様には、実証という競合が存在しません。第16回の教訓集×★3対応表のような材料を使って、こうしたお客様への★3支援をこの秋の営業の主軸に据えるのが、最も確実な一手です。
| 【関連リンク】 ・IPA「サイバーセキュリティお助け隊サービス(新類型)実証」: https://www.ipa.go.jp/security/sme/otasuke-scs.html ・実証事業 説明資料(PDF・2026年9月15日付)・中小企業等の定義(PDF):上記ページからダウンロード可能 ・SCS評価制度 トップページ: https://www.ipa.go.jp/security/scs/index.html ・お問い合わせ:IPA セキュリティセンター 普及啓発・振興部 普及啓発グループ px-otasuke-scs@ipa.go.jp |
| 石渡電気では、販売店の皆様の★3支援メニューづくりや、お客様から実証について聞かれた際の説明の仕方など、この局面での動き方のご相談をお受けしています。 自社の商圏と実証事業者の重なりの整理など、お気軽にお問い合わせください。 |
本記事はIPA「サイバーセキュリティお助け隊サービス(新類型)実証」ページ(2026年9月15日公開)、同ページ掲載の説明資料・中小企業等の定義、および過去のIPA公募要領をもとに、2026年9月16日時点の情報で作成しています。
対象エリア・業種等は実証実施の目安であり、参加の可否や詳細条件は各実証事業者にご確認ください。
石渡電気が一緒に準備します
石渡電気では、販売店様がSCS評価制度に関する顧客対応力を早期に身につけられるよう、制度情報の提供・勉強会・製品提案サポートを継続的に行っていきます。
制度は動き始めています。「顧客から聞かれてから考える」では遅いかもしれません。今この時期に情報を蓄え、提案の準備を整えた販売店が、これからの競争で先行優位を得ることになります。
ご不明な点・ご相談は石渡電気までお気軽にお問い合わせください。


















